2020.6.1 月曜日

【文献レビュー】健康な犬におけるカンナビノイド投与量の増加の安全性に関する予備調査

https://doi.org/10.3389/fvets.2020.00051
Front. Vet. Sci., 公開:2020年2月

ハイライト

目的

CBD、THC、またはCBDおよびTHC(1.5:1)含む3つのヘンプオイル製剤とプラセボの段階的用量の安全性と忍容性を評価すること。

結果

犬はCBDオイルの用量増加に十分耐え、軽度の副作用のみを示しました。
1回あたりのCBD投与は18.3–640.5 mg、体重当たり(〜2–62 mg / kg)の範囲で徐々に増量しました。
副作用として1割の個体に身体活動の低下あるいは/および食欲の低下を認めました。
THCを含むオイル群(THC優勢の群およびCBDおよびTHC混合群)は顕著な身体活動低下と食欲の減少を示しました。

実験設計

無作為化、プラセボ対照、盲検、並行研究。

動物

健康なビーグル犬20匹(オス10匹、メス10匹)。

方法

イヌは5つの治療グループにランダムに分けました(各グループとも雌雄2頭ずつ)グループの内訳は、CBDオイル、THCオイル、CBD / THCオイル(1.5:1)、ヒマワリオイルプラセボ、および中鎖トリグリセリドオイルプラセボ。
経口投与では、10回まで段階的にオイルを増量し、各段階の投与間隔は最低3日間としました。安全性、忍容性、有害事象(AE)の発生を評価するために、臨床観察、身体検査、全血球計算、臨床化学、および血漿カンナビノイド測定を実施しました。AEは、軽度、中等度、重度あるいは医学的に有意とする3段階で評価しました。

結果

CBDオイル製剤の用量漸増は、プラセボと同等に安全であり、THCを含むオイル群よりも安全であることが示されました。プラセボオイルは10回、CBDオイルは10回(640.5 mg;〜62 mg / kg)、THCオイルは10回(597.6 mg;〜49 mg / kg)、CBD / THCオイルは5回(140.8 / 96.6 mg CBD / THC;約12 mg / kg CBD + 8 mg / kg THC)の段階的に増量しました。
有害事象はプラセボを含む5つのグループのすべての犬で示され、大部分(94.9%)は軽度でした。中程度のAE(すべてのAEの4.4%)および重度あるいは医学的に重要なAE(すべてのAEの0.8%)は、体質変化(嗜眠、低体温症)症状または神経学的(運動失調)症状で、THCを含むオイル(CBD / THCオイルまたはTHCオイル)で顕著でした。

結論と臨床的重要性

犬はCBDオイルの用量増加に十分耐え、軽度のAEのみを呈しました。個体あたり18.3–640.5 mgのCBD(〜2–62 mg / kg)を含むCBDオイルの10段階の増量試験によって、CBDオイル製剤がTHCより安全で忍容性が高い事が示されました。また本研究における投与前夜の絶食は、CBDのバイオアベイラビリティを高めた可能性があります。

考察

アニマルCBD研究会 獣医療監修:
ヤマザキ動物看護大学 動物看護学部 准教授
茂木千恵 博士(獣医学)

CBDの安全性と忍容性は、主にげっ歯類とヒトで検討され、ヒトでは、最小15‐20 mg /日から最大 1,200-1,500 mg /日の範囲のCBD(経口用量)における副作用が、十分に許容されています。マウスでは、3〜100 mg / kgの範囲の経口投与ではカタレプシーが見られませんでした。他の文献ではイヌにおいて、CBDは、4または12週間(1日2回投与で1回につき2から2.5㎎/ kgの用量)、または6週間(1日2回投与で1回につき5または10mg / kg)で良好な経過をたどったという報告もあります。実際、CBDに関する批判的なレビューレポートを発行している世界保健機関(WHO)においても、2018年に「CBDは一般に良好な安全性プロファイルと比較的低い毒性で十分に許容される」(資料URL;1)と結論付けています。

CBDが親油性であるため脂質と経口CBDの同時投与により、脂質を含まない製剤と比較して、ラットでのCBDの生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)がほぼ3倍に増加することが報告されています。本研究でも、絶食後に食物とともにTHCを投与した場合はTHCのみを投与した場合に比較して最大血中濃度が低下し、最大血中濃度に達する時間(Tmax)も遅延しました。つまり食餌との同時投与はCBDの吸収率を下げることにつながると考えられます。

資料URL

  1. https://www.who.int/medicines/access/controlled-substances/CannabidiolCriticalReview.pdf