2020.6.12 金曜日

【CBDについて一緒に考えよう】第3回 「CBDの歴史」その1

今回はCBDの歴史について書いてみたいと思います。

その前に、ヘンプには様々な呼び名があります。それは、ヘンプが世界的に規制されてきたという歴史があるからです。そこで、この連載では、以下のように表記していきます。

「ヘンプ」THC 0,3%以下の大麻草のこと、産業大麻の総称
「大麻草」植物としての大麻の総称
「大麻」大麻取締法で禁止されている部位の名称
日本の伝統文化や繊維としての名称

さて、大麻の有効成分を抽出する研究が始まったのは、19世紀です。意外と昔に始まったという印象ですね。19世紀には、大麻だけではなく、様々な薬草からアルカロイド(植物塩基)とよばれる薬草の有効成分が抽出されました。このことで、薬草の有効性の正体を知ることができ、それを化学式にすることで、有効成分を合成的に作る事が可能になっていったのです。
ところで、多くの植物のアルカロイドは水溶性なのですが、大麻のそれは油性です。そのことが、カンナビノイドの発見に時間がかかった原因のひとつです。

最初に抽出に成功したのは、イギリスで製薬ビジネスを始めたスミス兄弟です。1846年、彼らはアルコールを使って大麻の有効成分の抽出に成功したと報告しています。彼らはこれをカンナビンと名づけます。しかしこれはまだ純粋な有効成分の抽出としては、不十分でした。その後、19世紀末にイギリスのウッドら3名の化学者によってCBN(カンナビノール)が発見され、数十年の研究の末にイギリスの化学者カーンが、はじめてCBNの構造式を明らかにします。このことで研究のスピードが加速し、1940年代にアメリカ・イリノイ大学のロジャー・アダムスが、遂にCBD(カンナビジオール)を精製し、その化学構造式を明らかにすることに成功しました。

しかし当時はCBDよりも、大麻の活性成分(陶酔成分)であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)への関心が高く、CBDは注目されていませんでした。

その後、イスラエル・ヘブライ大学のメコーラム博士らによってTHCの有効性や内因性カンナビノイドが発見されます。
そして20世紀後半には、その他のカンナビノイドも次々に発見され、CBDやCBNの有効性などについても解明されていきます。その研究は世界中の科学者たちによって、現在も進められています。

カンナビノイドの有効性についてはまだ謎が多く、大きな可能性が秘められているのです。

(その2に続く)

長吉秀夫 作家
1961年、東京都生まれ。舞台制作者として、内外の民俗音楽・舞踊やロックと出会い、全国津々浦々をツアーする傍ら、ジャマイカやインド、ニューヨーク、ツバルなどを訪れ、大麻や精神世界、ストリート・カルチャーなどを中心にした執筆を行い、現在に至る。著書に『大麻入門』(幻冬舎)、『医療大麻入門』(キラジェンヌ)、『健康大麻という考え方』(ヒカルランド)『大麻』(コスミック出版)などがある。