2020.6.12 金曜日

【文献レビュー】CBDは抗生物質の潜在的な「ヘルパー」化合物

https://doi.org/10.1038/s41598-020-60952-0
2020年3月5日公開

南デンマーク大学の研究者らは、抗生物質をカンナビジオール(CBD)と組み合わせて使用すると、抗生物質の有効性を高め黄色ブドウ球菌に対する増殖抑制効果が高まることを発見しました。

ハイライト

CBDは抗生物質バシトラシン(BAC)のグラム陽性菌(ブドウ球菌種、リステリア菌、およびエンテロコッカスフェカリス)に対する効果を増強します。

概要

カンナビジオール(CBD)のグラム陽性菌のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA )Enterococcus faecalis(E. faecalis)、Listeria monocytogenes(L. monocytogenes)、およびメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSE)に対するヘルパー化合物としての抗菌効果を検証しました。
バシトラシン(BAC)*はCBDと併用した場合、グラム陽性菌(ブドウ球菌種、リステリア菌、およびエンテロコッカスフェカリス)に対する抗菌効果が増強されますが、グラム陰性菌(緑膿菌、ネズミチフス菌、肺炎桿菌、および大腸菌)に対しては効果を示しませんでした。

 細胞培養実験では、CBDはBACのMIC(最小発育阻止濃度)値を少なくとも64倍減少させ、テストされたほとんどのグラム陽性菌でFICインデックス(文末を参考)は0.5以下になり、併用することで相乗効果を示すことが明らかとなりました。また黄色ブドウ球菌の形態学的変化として細胞分裂の障害と細胞壁の不安定化が観察されました。
 これに加えて、CBDとBAC併用時には非常に重要な細胞分裂遺伝子(ezrA)のmRNA転写が阻害されることも判明しました。

「抗生物質をその効果を高めるヘルパー化合物と組み合わせると、同じ効果を得るために必要な量は少なくなります。CBDはヘルパー化合物として働き、耐性菌の減少に貢献するかもしれない」と主任研究者のJanne Kudsk Klitgaardは説明しています。
この研究は、Scientific Reports誌に掲載されてい ます。

*BACは、細胞溶解につながるペプチドグリカンの生合成を妨害することにより、細胞壁合成を妨害し、殺菌性抗生物質として機能する関連する環状ペプチドの混合物です。
CBDを他の抗生物質Dicloxacillin (DCX), Daptomycin (DAP), Nisin およびTetracycline (TET).)と併用する予備実験も実施し、BACと併用するときに最も効果的であることが分かりました。

茂木コメント

CBD単体では炎症反応であるCOX経路や活性酸素種産生の抑制により、好中球の殺菌機能が抑制されることが知られているが、今回の報告によって、適切な抗菌薬との併用により、抗菌作用の増強が見込まれることが分かった。

参考

FIC

抗菌薬同士での相互作用は、in vivoでの評価は困難ですので、主にin vitroにおいて検討されています。一般によく用いられる方法として、checker-board法が知られています。この方法は各薬剤の単独でのMIC、最小発育阻止濃度、および2剤を様々な濃度で組み合わせた際のMICを測定します。こうした結果からFIC index(Fractional inhibitory concentration index)を算出します。このFIC indexの算出は、抗菌薬併用時の薬剤AのMIC値を薬剤AのみのMIC値で除した値と、抗菌薬併用時の薬剤BのMIC値を薬剤BのみのMIC値で除した値とを加えることによって計算します。
 算出されたFIC indexの数値により薬剤間の相互作用は以下の4種に分類されます。FIC indexが0.5以下の場合、このような場合は相乗効果と呼びますが、これは併用時の効果が単独で作用させた場合の総和よりも効果が非常に強いことを意味しています。FIC indexが0.5から1の間の場合には相加効果と呼び、この場合は併用時の効果が単独で作用させた場合の総和よりやや強い効果があると判断されます。FIC indexが1~2の場合を不関と呼び、相乗効果、相加効果も示さないが拮抗もしない状態と評価されます。そして2以上の場合を拮抗作用と呼び、併用時の効果が単独で作用させた場合の総和に劣る効果しか得られないことを意味しています。

http://medical.radionikkei.jp/yakugaku/date/20080805/
2020年5月26日閲覧