2020.10.14 水曜日
茂木千恵先生に聞く 「ちょっとだけ専門的なアニマルCBDのお話」 その2 CBDの効果的な使い方とメカニズムについて
実際にCBDを動物に使用する際には、どんなことを注意したらいいのだろうか?いかに安全なCBDといえども、より効果的に安全に使用したいものだ。そのためにはCBDやカンナビノイドがからだに効くメカニズムも知る必要がありそうだ。
今回も、ヤマザキ動物看護大学動物看護学部准教授の茂木千恵先生に、ちょっとだけ専門的なアニマルCBDについてのお話を聞いてみた。
まずはよく観察すること
長吉(以下N):今回はCBDの使い方と注意点などについて勉強していきたいと思います。先生、宜しくお願いします。
まず、CBDの効果的な使い方を教えてください
茂木(以下M):そうですね、結論からいうと、不調な動物に使用して、それが改善されていることを飼い主さんが理解してくれるのが、最も効果的な使用方法といえるでしょう。そういうと、身もふたもないように聞こえますが、そうなんです(笑)
例えば、動きがよくなるとか、食欲が出てきたとか、皮膚の赤い炎症が引いてきたとか、血液検査の数値がよくなったなどといった具体的に悪かった部分を見出して、それに注目しながら投与すると、効果を実感してもらえると思います。
元気な犬に与えてもあまり変わりませんが、健康な個体でも実際はストレスを受けていたりして体内機能が落ちているはずなので、CBDを与える意味はあります。しかし、飼い主さんがそれによって効果を感じるか、気づけるかというと微妙です。人間側、評価する側の問題でもあるのです。
N:なるほど、その通りですね。
観察のコツは何かありますか?
M:アンケートがありますので、それを目安にしてみてください。
N:CBDを使用するためには、観察することが重要なのですね
M:そうです。そして大切なことは、CBDをたくさんあたえすぎて効果的なところを越えてしまわないことです。これを「オーバードーズ」といいます。オーバードーズになると、興奮性のところがでてくるなどの悪化がみられます。
もともと治したいところが分かっていれば、状態を観察しながら適量を投与することができます。しかし、漠然とした状況で治したいと投与しはじめると、効果的な容量をこえてしまい、オーバードーズになる可能性があります。
基本的に、CBDの使用を開始するときは少量から投与します。これを「マイクロドージング」といいます。
N:オーバードーズの際には、どのような症状が現れるのですか
M:神経内には、刺激を他の細胞に伝える神経細胞であるニューロンがあります。そして、ニューロンとニューロンの間では、それを繋ぐ「神経伝達物質」という重要な情報伝達物質が分泌されます。エンドカンナビノイドは、この神経伝達物質が出過ぎたときに、「多すぎるよ」と情報のフィードバックを起こします。そして足りなければ「少なくなってきたよ」と活発にフィードバックしていく。そのようにして、エンドカンナビノイドはある一定の情報が適切に送られたり送られなかったりするところに関わっています。これを「逆行性シグナル」とよびます。
そこに、外から大量のCBDを補ってしまうと神経が勘違いをおこしてしまい、「多いからやめておこう」という認識がおこります。これによって神経伝達物質の分泌が抑えられます。さらにCBDを投与しすぎると、神経伝達物質の分泌が抑えられ過ぎて、逆に抑制性の神経伝達物質である「ギャバ」まで抑制されてしまいます。この状態を「脱抑制」といいます。ギャバは、神経伝達物質の分泌が抑えるブレーキの役目をしていますが、ギャバが効かないということは、アクセルしかありません。それによって、脳内でドーパミンやアドレナリンが強く発現することになり、過活動になってしまうのです。
CBDが効くメカニズムとは?
M:繰り返しになりますが、エンドカンナビノイドやCBDが効くメカニズムを「逆行性シグナル」といいます。神経伝達物質が刺激を送った時に受け手側のシナプスに電気シグナルが入ると、そこから要求に応じてアナンダミドや2AGといったエンドカンナビノイドがつくりだされ、即座に沁みだしていく。そして、情報の送り手である伝達シナプスに「もういいですよ」とか「もう少し出してください」という情報を送ったりする。そして、送った瞬間にFAAHというエンドカンナビノイドを分解する酵素によって、シュッと消えてなくなる。エンドカンナビノイドの命は、本当に短いのです。一瞬で情報が送られ、消える。だからこそ細かな調節ができるのです。
私たちの体は、体温が0,1度変わっても、それを調節するために様々はホルモンが動いたり、神経シグナルが動きます。そこにもすべて、エンドカンナビノイドシステムが関わっているのです。
実際に血圧を上下させる薬や頭痛薬など、具体的にいろいろな症状に効くと言われている薬は、たいがいがエンドカンナビノイドシステムを動かす薬なのです。
すべての薬というと言い過ぎかもしれませんが、カンナビノイドを投与することで、エンドカンナビノイドシステムが活性化したりしなかったりすることもわかってきました。これは無視できないシステムです。
病気に至らないまでも、うつ状態や肥満などの見過ごしがちな不調にも、カンナビノイドシステムの反応性というものが関わっていることが、最近の研究で分かってきました。エンドカンナビノイドは要求に応じて造り出されて、一瞬で消えてしまいます。カンナビノイドの分泌バランスによっては、からだが反応するリズムがゆっくりになり、体が不調になることもあるようです。神経伝達物質の分泌量の多い少ないだけでは言い切れないような細かな調節というものを、カンナビノイドシステムが担っているのです。
神経を鈍化させることで過剰反応への効果がでる
CBDを外部から補うことによって、エンドカンナビノイドがつくられた時の情報伝達へのフィードバックが、うまく起きるのだろうと考えられています。
CBDは、神経が鋭敏に反応するのを少し鈍化させる効果があります。てんかんに効くのは、恐らく神経が鋭敏に反応するのを鈍感させるためでしょう。てんかんを引き起こすシグナルが蓄積している状態にも、その反応を鈍化させるために発作が起きにくくなるということが分かっています。
皮膚のアレルギーに効くのも、同様のメカニズムだと考えられます。トラブルが起きている皮膚は炎症反応をおこします。炎症反応で赤くなるからこそ治るのですが、アレルギーというのは、皮膚が治りつつあるのにさらに炎症反応をおこしてしまう現象です。その過剰反応をCBDが鈍化させることで、ゆっくりと穏やかになるように体内に効いていると考えられます。
N:CBDは効くというよりも調節してくれているのですね
M:そう考えていいと思います
N:ありがとうございました